※毎度の如くネタバレしています。
今年(2026)秋に✨完全新作映画化✨が決まっているため、顛末を知らない方は場末のブログではなく新作映画を見てほしいです。まだ配役すら出てないけど……。
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市川崑が金田一耕助に豊川悦司を迎え、装いも新たに放つミステリー大作。落武者の祟りに呪われた"八つ墓村"で次々に起こる連続殺人事件の謎を解く金田一の活躍を描く。戦国時代、懸賞金に目が眩んだ村人が8人の落武者を惨殺したことから、その落武者の祟りが言い伝えられる八つ墓村。時は戦後。神戸で会社員として平凡に暮らす寺田辰弥のもとに、八つ墓村から辰弥の祖父と名乗る男・丑松が訪ねてくる。その日から、辰弥のまわりで次々と猟奇的な殺人事件が起きる・・・。(C)1996 東宝・フジテレビ・KADOKAWA
1977年版もアマプラにありますが、『犬神家の一族』が映画をあまり観ない自分にとっても衝撃的に面白かったので市川崑監督版が見たいと思いこちらを選びました。
トヨエツといえばイケオジ、イケオジという言葉はまさにトヨエツのためにあると信じて疑わないレベルに豊川悦司の顔が好みの真ん中を突いているため、彼が金田一を演じるのは正直どうなんだろう?と考えたりしつつ、そのことはのちのキャストに関する感想で詳しく書きます。
まず、原作が数ある金田一シリーズの中でも相当面白いほう(その前に出た『夜歩く』の5倍くらい面白いと思っています)なのに、映画を見てから再読すると取りこぼしていたその魅力をまたどんどん見つけられる、というのが本映画のすごいところです。
『犬神家の一族』は原作を読んで人物やあらすじを理解し、それから映画を観るとまさに原作通りの画が広がっている、という体験ができます。
『八つ墓村』は先に映画を観て、それから原作を読んだ方が原作をより楽しめると思います。省かれている部分ももちろんあるのですが、それ以上に登場人物たちが良い具合に原作以上の人間味をもって鮮烈な印象を残してきます。
登場人物について
森美也子
浅野ゆう子が演じており、想像ぴったりそのままの美也子です。大柄で面長で古風な顔立ちの美女、という外見的特徴を全て満たしています。そして何よりこれだけ人間を殺しまくっている美也子であっても、作品が辰弥の視点で書かれている以上、「毒婦」ではなく「滅多にいないけど決して存在しないわけではない、都会の姉御肌な美人」として演じられていてほしいという思いがあって(なぜなら犯人が判明するまで辰弥はずっとそうとしか感じていないから)、浅野ゆう子の演じる美也子は完璧でした。
美也子は原作にない場面が色々付け足されており、(原作では辰弥の一人称視点ゆえに描かれていなかった)慎太郎との絡みがより顕著です。八つ墓村は石灰岩が豊富な立地であることを慎太郎に教わり、後から調べたことをずらずらと披露した後に「にわか知識だけど」とはにかむ場面は、慎太郎しか知らないかわいらしい一面、という感じで殺人鬼の面との対比として綺麗でした。
春代
こちらは「想像そのまま」とは別ベクトルではありつつ、春代として納得のいくキャラクター造形でした。春代が大柄という描写はなかったと思う(病弱なことからむしろ小柄なイメージを持っていた)のですが、美也子と同じくらい背が高いです。今回辰弥があまり背が高くないこともあり、唐突に抱きつく場面でも「大きいな……」とはなりました。ただ薄幸の美女感は存分に輝いているのとヅカオタ的にはビジュアルがれいこさん(月城かなと)に似てると感じました。2026年版で演じてほしいくらいです。
春代の感情の動きは尺の関係か原作よりやや拙速でしたが、その分情熱的に恋焦がれている気持ちは伝わってきて、辰弥の腕の中でこと切れる場面では見ているこちらもすでに好きになってしまっているので辛いです。メソメソ。
美也子の慎太郎への好意が明示的に描写されている本映画では、春代に美也子への対抗心(未満のささくれ立った感情)は見受けられません。女の恋愛にまつわるドロドロ!とかでは負けヒロインに感情移入しがちなのでこちらの方が私は好きです。
典子
原作よりもずっと影が薄い役回りで辰弥とくっつきもしませんが、ビジュも演技も原作序盤そのままです。辰弥と恋に落ちなかったために、実年齢よりずっと幼く見えて不美人ではないが色気もない、という原作序盤と変わらない状態で物語の終わりを迎えます。
寺田辰弥
モテにモテまくる原作から想起される通りの美青年で、しかも華奢ではないけど長身でもない感じが春代の庇護欲をそそったのだろうと感じさせます。眉の感じこそ昭和的なんですが、中顔面が超短くて若干外斜視の入った目つきが今でいう吉沢亮みたいな枠のイケメンです(俳優は元ジャニーズの方らしい)。
原作にあった「夜になると泣き出し決して己の出生を語らない母」「年の離れた養父との離別」が映画内では語られない点、映画は小説と違って辰弥の内心が細々と地の文で語られるわけではない点から、原作より少し鑑賞者との間に距離があるため、本を読んだ時よりも却って俯瞰して見られる気がします。
慎太郎
春代と同じく原作の芯はしっかり残りつつ、一方でやや異なるイメージのキャラクターでした。辰弥より直接的に昭和のハンサムの顔立ちをしており、原作にしばしば出てくるワードである「爺むささ」がないです。原作では終盤まで人間味のする描写がなかった(犯人候補の1人として見せたい?)ですが、美也子の作業場を訪れるシーンではほんのり笑顔も見せており、より身近に感じる造形になっています。
慎太郎に対する辰弥の嫌悪感が原作と比して非常にマイルド(映画では脅迫状の主が慎太郎だと疑ったりはしない)なことに加えて、美也子の死に方が違っているため、慎太郎もまた事件の被害者であるという印象をより強く受けました。
金田一耕助
最も原作と雰囲気が違うのですが、『八つ墓村』の金田一はぶっちゃけ大して活躍しないため問題になりません。私は古谷一行の演じる金田一が最も原作に近いと思っていますが、トヨエツの金田一は鋭利で洗練された外見に吃りというより胡散臭い話し方をするため、『相棒』の右京さんみたいでした(ちなみに水谷豊の顔も大好きです)。
小柄・ひょろひょろ・南方焼け(『八つ墓村』は1948年の話だそうなのでその頃にはすでに黒くないかも)の3つの描写が強く頭に残っていると、
・大柄(慎太郎より尚デカい)
・袴からでもわかる肩幅
・色白で薄肌にそばかすの浮かんだ
金田一耕助にめちゃくちゃ面食らうことになります。村の農夫に追い出されかける場面で農夫よりデカくてゴツいのでジョークに見えます。
逆に(?)、こういう金田一が活躍しなくて主人公が別に置かれたタイプの作品でいろんな金田一を見られたら面白いのでそれはそれでありだと思いました。『悪魔の手毬唄』なんかは比較的活躍するし聞き込みで動き回るので、原作に忠実な金田一である方が見ていてストレスが少なそうだし……。
他、小竹小梅姉妹もぴったりそのままでした。
要蔵・久弥・田治見の先祖を演じていた岸部一徳は流石の怪優ぶりで、久弥のじっとりとした陰険さが短い出番の中で完璧以上に仕上がってました。
他のいろいろな感想
久野のメモの描写がなくなったことも関係して、上記で記載したように登場人物間の対立・コントラストがおとなしくなっています。
『八つ墓村』の他金田一作品より好きなポイントとして、私のような推理小説ビギナーでも犯人が分かるように、とても分かりやすくヒントを順出ししてくれている、という点があります。
・小竹/小梅姉妹の区別がついておらず殺人時も間違えられている
→美也子には小竹/小梅の区別がついていないことが序盤で示されている
・久野が毒入りのおむすびを食べて死んでいる
→この古臭い因習村で男が料理なぞしそうもないので、女が犯人像として浮かんでくる
・終盤、春代が犯人の小指を噛み切る時の「キャーッ」という悲鳴
→この時点で女が美也子と典子しか残っていないため、美也子しかありえない
このうち上2つについてはきちんと残されており、映画しか見ていない人でも自力で犯人推測が可能になっています。
一方で、鍾乳洞をちゃんと見たことがないため、初読時は原作終盤の鍾乳洞内を逃げ惑う場面でリアルな想像がついていませんでした。映画ではこの場面こそカットされているものの天然の、まさに原作で書かれたような鍾乳洞が出てきて、再読時には情景がしっかりと浮かぶようになりました。
原作で、慎太郎に対して亀井の写真を見せ「これを見ても相続するようなクソ度胸はない」と言い放ち相続を辞退する辰弥が好きだったので、その場面は映画にも残して欲しかったです。
よく金田一ベスト作品というと『獄門島』が挙げられます。『獄門島』は殺害のカモフラージュ方法や釣鐘のくだりなどトリック的な面は見事なんですが、殺害の動機があまりにも現代離れしていて雑さを感じてしまう(のと犯人が3人いるとやっぱ1人くらいはもっと露骨に顔に出るだろとなる)ので、小説としては『八つ墓村』の方が私は好きです。
彼に財産さえあればきっと私にプロポーズしてくれるのに、という美也子の切な願いが動機という、傲慢な美女のロジックが眩しいです。
(今回の記事微妙に長くなってしまった……)
前回記事で『窓際のトットちゃん』『嵐のピクニック』を買ったので感想書こっかな🎵みたいなことをのたまい、読了はしたのですが、前者は大阪の公立中学校に通った身としては頑なに子供を支援学級へ入れることを拒む方々から様々な経験をもらったためバチボコに炎上しそうな感想しか書けないし、後者は感想を書くのが難しい短編しか入っていなかった(のと読んでみたら元彼の家で過去に読んだことある本だった)ので書けません。
予定は未定!!